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舞台俳優 

       岡崎 正典(ザキ有馬)

『ステージタイガー』所属、『劇団有馬九丁目』創設

―舞台俳優になろうと思った理由

 

気が付いたらなっていた、という感じですかね。最初に演劇っぽいことをしたのが幼稚園でのお遊戯会で、それがとても楽しくて。その後高校入学に至るまでずっとお芝居をしたいと思っていました。でも中学までなかなか機会に恵まれず、高校でようやく演劇部に入ったのが最初です。それまでずっと「もう一回お遊戯会したいな」という気持ちが強かったですね。でも高校卒業した後も大学入ってすぐに演劇サークルに入団し、卒業してもなお辞めきれずに『劇団有馬九丁目』を立ち上げて活動を続けたら、大学の9つ上のOBである先輩たちが所属する『ステージタイガー』に声をかけて頂いて、入団させて頂きました。

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アパレルで働きながら、舞台俳優としても活躍する岡崎さん。岡崎さんの言葉全てに夢がつまっていた。皆さんは自分の今の姿や、将来の自分を熱く語れるだろうか。今回は『ステージタイガー』の稽古にお邪魔させて頂いた。

 

自己紹介

『ステージタイガー』に入ったのは3年前の2012年です。基本的には俳優として活動していますが、演出助手やときには演出に携わる場合もあります。現在劇団員は14人で、一年間に5、6回公演をしています。

また、『ar9stage/劇団有馬九丁目』という自分の団体を立ち上げ、作家・演出家として活動しています。加えて、アパレルの準社員としても働いています。

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―定職に就こうとは考えなかったのか

 

痛いところをついてくる(笑)。周りも親もいい企業に就職するべき、っていう考えを持つ人が多かったし、今の立ち位置に不安を感じることはしょっちゅうです。でも安定した地位に魅力を感じなかったというのが大きいですね。「こっちのほうが幸せになれるんじゃないか?」って。息苦しさを感じたっていうのもあります。実際に定職ではなく準社員として働いて、同世代ほどの稼ぎは持てないけど、飢えるほどではないな、と思います。それこそ、ここにも信じる力が大事だったりして「俺はいける、大丈夫!」と思うことでどうにかなってます。勿論、今は演劇だけでご飯を食べていくことは出来ないですけど、ほんの僅かですが、少しずつ稼ぎの足しにはなってきていますし、それで続けられるのは本当に幸せなことなので続けていきたいです。

―演じることに対して心がけていること

 

前々から思っているのは「信じる力が一番大事」だと思っています。演劇は嘘というのが大前提じゃないですか。台本ありきの世界の中で動いているから、前もって将来がわかる、未来がわかってしまう。だから嘘の塊でしかないんですけど、その嘘をお客様に忘れさせてしまうぐらい、役者が信じる力を持ったらそこに現れるときは本物だ!っていつも思います。『ステージタイガー』は「ランマイム」と呼ばれる、その場で走る演技が多いんですね。しかし舞台上では走る動作をしているだけで、前には進んでいない。もちろんマイムとしての表現力・技術もあるけれど、「自分が今どこかへ向けて走っている」と信じることで、お客さんも今この人は走っているんだなと信じてしまう。つまり技術も勿論だけど、まずは自分が信じることが大事だと。

 

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―劇団員として活動を続ける原動力

 

ネガティブな意見になってしまうんですが、一番はただただ、悔しいという気持ちです。僕の通っていた中学校では演劇の発表が毎年秋の文化祭の時にありました。その行事を一年生の頃から楽しみにしていたのですが、いざ自分が三年生になった時に、学校の方針で演劇発表が取りやめになりとても悔しかったのを覚えています。次に高校に入り演劇部に入りました。高校演劇っていう演劇部の大会があるんですが、全然実力がなかったので大会には負けて、悔しい思いをしました。さらに、高校も大学も人数が多くて毎回のように、オーディションがあったので何度も悔しい思いをしましたね。今でも、上手くいかなかった時は、しょっちゅう悔しいと感じます。でも一回もやめようとは思いませんでした。逆にやってやるぞ!といつも思っています。なにより演じることが楽しくて、大好きだからだと続けられるのだと思います。

 

 

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―悔しい気持ちが晴れるのはいつなのか

『劇団有馬九丁目』という自分の劇団で、本当に自分が良いと思える作品をつくって、お客さんからも本当に良いと評価を貰えたときかな。もしくは分かりやすい形でなら、ダブルコールを貰えた時です。それと劇団有馬九丁目が定期的に安定して名作を提供し続ける団体に成長すること。それが理想です。

―演出・脚本もやっているとのことだがいつから興味をもったのか

 

高校生の頃から、既存の脚本が何を読んでも面白いと思えなくて、自分で脚本を書くことを始めました。今思えば文章読む力がなかったんだと思います、よいテキスト、よい作品を味わう感性が。はじめて本を書き上げた時は「世界最高の戯曲が出来たぞ!」なんておめでたいことを考えていたのですが、いざ実際に自分の書いた脚本が上演されたとき「あれこんなはずじゃなかったぞ」と妙な震えを感じました。成功したところもあったけど、お客様に見せるまで自分で気づけなかった穴が沢山あり過ぎて「なんて浅はかなレベルで満足していたんだ、これはもっと突き詰めないと、何も面白くないぞ」と。

演出で一番大きく影響受けたのは、大学の演劇サークル所属の時に『ステージタイガー』へ客演として参加する機会が一度あったのですが、そこで役者も演出もどちらも突き詰められるところまで攻めてみようと思いました。演出を深めていこうにも演出ばかりしていたら、役者の苦しみが分からない。自分が役者の楽しみや苦しみを知っていたら、それに合わせて誘導して、素晴らしい世界を作れると思います。だから、役者も演出もやりたいです。

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―大学生へのメッセージ

 

特に就活生向きの話をするのであれば、自分の進路を決めるのって、やっぱり自分が今まで見てきたものでしか決められないと思います。見るべきもの触れるべきものはいくらでもあるのだから、機会があるうちに経験しに行った方がいいと思う。大学生も忙しいと思うけど空き時間を有効に使うとか、長い休みをとって海外行くであるとか、今まで自分が見たことのない世界を見に行くとか、あとたまに演劇見たりすれば何か変わるんじゃないかな。学生なんだから経験が少ないのは当たり前。現状に満足するのではなくいろんな所に足を運ぶこと、行動をおこすことが大事だと思います。

―あなたにとって役者とは?

 

なんでもありだからこそ本当に自分が出ると思います。ダンサーは音楽に合わせて素晴らしい身体性をもって体を動かす。ミュージシャンは楽器という大きな強い武器がある。でも役者は強い武器がありません。もちろんよく響き滑舌もまわる発声を学ぶとか、体を鍛えるとかはあります。でも、そんなものがなくても役者は名乗れる。ただのグータラでも「役者」を名乗ればその瞬間から役者が出来ます。それが逆に味があったりする世界だし、どう舞台と関わるかのスタンスが見られるという意味で、自分がさらけ出されてしまいます。無理して強がるのも役者だし、ありのままの自分をだすのも役者。

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